1.海鳴りの詩

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

五体に刻んだ 赤銅色(しゃくどういろ)の
シワが男の 五線紙だ
明るい娘に 育てたことが
冥土の母ちゃんへ でかい土産だと
笑う親父(とうちゃん)の 髭から背中から
海鳴りの詩が 聞こえてくる
ヤンサエー ヤンサエー

酒断(さけだ)ちしてまで 口説いた女
死んだあとまで 恋女房
世間の女が カボチャに見えて
ヤモメを通したね 男盛りをよ
いばる親父(とうちゃん)の 胸から腕(かいな)から
海鳴りの詩が 聞こえてくる
ヤンサエー ヤンサエー

母親知らずに 嫁いだ娘
無事に女房を してるやら
初孫祝って 酒のむまでは
倒れちゃなるまいと 波に揺れながら
力む親父(とうちゃん)の 舟から帆綱から
海鳴りの詩が 聞こえてくる
ヤンサエー ヤンサエー ヤンサエー


2.漁歌

作詞:山田孝雄
作曲:浜圭介

俺が網を 引くのはよ
可愛い女房(おまい)と 子供によ
腹一杯飯(めし)を 食わすためなんだよ
坊(ぼん)の岬に 桃花咲く頃
今年も鰹が 鰹が来るぞ
はまらんかい きばらんかい
東支那海は 男の海よ

俺が海で 死んだらよ
可愛い女房と 子供はよ
どうして生きる 嵐にゃ負けるものかよ
夫婦鴬 裏山で鳴く頃
今年も鰹が 鰹が来るぞ
はまらんかい きばらんかい
沖は荒海 男の海よ

夫婦鴬 裏山で鳴く頃
今年も鰹が 鰹が来るぞ
はまらんかい きばらんかい
東支那海は 男の海よ


3.道南夫婦船

作詞:星野哲郎
作曲:新井利昌

親に貰った この血の中を
熱く流れる 命潮
元へ辿れば 父と母
いつも元気で いて欲しい
熱い祈りを 波に浮かべて
仰ぐ心の アヨイショ 駒ヶ岳

荒れる海辺に 縋って生きる
北の漁師は 波の花
群れる鴎も 仲間衆
こぼれ秋刀魚を 分けながら
地球岬を 右に眺めて
今日もあんたと アヨイショ 網を刺す

浜の女房と 呼ばれるからにゃ
雪も氷も 恐れぬが
浮気されたら わしの恥
二つ合わせて 一になる
愛の人生 海に咲かせる
夫婦船だよ アヨイショ ほまれ船


4.兄弟船

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

波の谷間に 命の花が
ふたつ並んで 咲いている
兄弟船は 親父のかたみ
型は古いが しけにはつよい
おれと兄貴のヨ 夢の揺り篭さ

陸に上って 酒のむときは
いつもはりあう 恋仇
けれども沖の 漁場に着けば
やけに気の合う 兄弟鴎
力合わせてヨ 網を捲きあげる

たったひとりの おふくろさんに
楽な暮らしを させたくて
兄弟船は 真冬の海へ
雪の簾を くぐって進む
熱いこの血はヨ おやじゆずりだぜ


5.波

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

寄せては返す 波また波を
あえぎただよう 木の葉舟
それが私の 人生ならば
一期一会(いちごいちえ)の 出会いを求め
夢という名の 舟を漕ぐ

雄たけびあげて 逆巻く波に
呑まれ叩かれ はいあがりゃ
板子一枚(いたごいちまい) 天国・地獄
明日(あす)の行方は 知らないけれど
風に向かって 舟を漕ぐ

大波小波 上げては下ろす
波に身をもむ 女舟
乗ればゆさぶる 外(はず)せば嘲(わら)う
泣くなくさるな 希望の二文字
胸にかかげて 舟を漕ぐ


6.なみだ船

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

涙の終りの ひと滴
ゴムのかっぱに しみとおる
どうせおいらは ヤン衆かもめ
泣くな怨むな 北海の
海に芽をふく 恋の花

クルクル帆綱を 巻きあげて
暁の千島を 忍び立ち
あてにゃすまいぞ ヤン衆かもめ
舵であやつる 舟のよに
女心は ままならぬ

惚れたら遠慮は できまいが
いやというなら ぜひもない
夢をみるなよ ヤン衆かもめ
にしん枕に 北海の
月に哀しや 泪船


7.度胸船

作詞:星野哲郎
作曲:市川昭介

人を押しのけ 出世のできる
柄じゃないぜと あきらめて
北へきたんだ 千島の海に
眠る親父を ゆりおこし
唄う男の 度胸船

親父来たぞと 吹雪を呼べば
風がほめるぜ よくきたと
写真だけしか 知らないけれど
海を見せれば 勇み立つ
熱い血をひく 度胸船

ころぶ兄貴を 弟がかばう
沖は地獄だ 戦場だ
ホッケ大漁の 祈りをこめて
網に御神酒を ふりかけて
雪に放浪う 度胸船


8.船頭小唄


9.海で一生終わりたかった

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

甘い恋など まっぴらごめん
親のない子の 見る夢は
小さな貨物(カーゴ)に 乗り組んで
港々で 恋をして
海で一生 終わりたかった

五体(からだ)こわして 船から降りて
陸(おか)にあがった かっぱだよ
海原とおく 眺めては
無念残念 くやし泣き
海で一生 終わりたかった

海は海でも ネオンの海は
俺にゃちっとも なじめない
海には母が いるという
おとぎ噺を 追いかけて
海で一生 終わりたかった


10.岸壁の母

作詞:藤田まさと
作曲:平川浪竜

母は来ました 今日も来た
この岸壁に 今日も来た
とどかぬ願いと 知りながら
もしやもしやに もしやもしやに
ひかされて

「又引揚船が帰って来たに、
今度もあの子は帰らない…。
この岸壁で待っているわしの姿が
見えんのか…。
港の名前は舞鶴なのになぜ飛んで
来てはくれぬのじゃ…。
帰れないなら大きな声で…お願い
せめて、せめて一言…。」

呼んで下さい おがみます
ああ おっ母さん よく来たと
海山千里と 言うけれど
なんで遠かろ なんで遠かろ
母と子に

「あれから十年…。
あの子はどうしているじゃろう。
雪と風のシベリアは寒いじゃろう…
つらかったじゃろうと
命の限り抱きしめて…
この肌で温めてやりたい…。
その日の来るまで死にはせん。
いつまでも待っている。」

悲願十年 この祈り
神様だけが 知っている
流れる雲より 風よりも
つらいさだめの つらいさだめの
杖ひとつ

「ああ風よ、心あらば伝えてよ。
愛し子待ちて今日も又、
怒濤砕くる岸壁に立つ母の姿を…」